(3)新羅の神と香春神社

「筑前國風土記」が「新羅の国の神、自ら渡り来りて、この河原に住みつき」と書いたのは、香春神社の第1殿に奉られる「辛国息長大姫大目命」です。
「辛国」は「韓国」であり、「新(辛)羅の国」です。
つまり新羅からこの地に来て住み着いた人々が敬いお祭りしていたのが香春の神です。

香春の地に朝鮮半島の新羅の人が来て住み着いたことと関連するのは、香春の第3峯から出る銅です。
香春の新羅の人は第3峯で銅の採掘に従事し、また銅の精錬などにたずさわる技術系渡来人であったと考えられます。
『延喜式』主税上に、鋳銭の年料である銅と鉛について、採掘して送る国名と量を挙げています。
この中に「豊前国。銅二千五百一六斤十両二分四銖。鉛一四百片」があります。
ここに記されている「豊前国。銅二千五百十六片十両二銖。鉛千四百片」があります。
ここに記されている豊前国の銅は、香春から産する銅を指していたと思われます。
現在も香春岳の三の岳の北東に上採銅所、採銅所、下採銅所の地名が残っています。
香春は、銅礦を産出する峯を持ち、新羅からやって渡来集団によって銅の採掘と製錬が行われました。
新羅系渡来人による銅の採掘などが始まったのは、8世紀において、「昔」とされていたように、はるかに遠い時代のことです。
そして、新羅系渡来集団の守護人が、辛国息長大姫大目命、すなわち香春の神でした。