全国に約600基あるといわれる装飾古墳は、北部九州にもっとも濃密に分布しています。特に、熊本県に約190基、福岡県に約80基があります。
装飾古墳は5世紀中頃から7世紀代にかけて築造され、家形石棺の内外面に線刻したもの、石室内の石の壁面に色彩で描いたもの、横穴の入り口や内部に彩色や線刻をしたものがあります。
初めは石棺や石障に幾何学文様を彫刻し彩色しますが、6世紀の前半頃から横穴式石室の壁面に赤・青・緑・黄・白・黒の色彩を用いて、幾何学文様のほか器材・動物・人物を描く壁画系が主流となります。
また、砂岩や凝灰岩の発達した地域には線刻を用いた横穴系が発達しました。
こうした装飾は、死者の魂を鎮めた魔性を除くためとか、または、葬儀を荘厳にするため、あるいは、死者を供養するために施されたと説明されています。
遠賀川流域一帯には、国指定特別史跡1基、国指定史跡2基、県指定史跡4基を含む19基の装飾古墳が分布しています。
少数ですが、内容は全国的に大変特色あるものが見られます。
桂川町王塚古墳は6世紀半ばの築造で前室・後室に五色の彩色壁画があり、装飾古墳としては高松塚古墳。
キトラ古墳とともに全国に3基しかない特別史跡に装飾古墳の一つです。
若宮町竹原古墳は6世紀後半の築造で、前室・後室に2色の彩色で翳・人物・馬・船・四神などが描かれ朝鮮半島の高句麗壁画古墳の影響を思わせます。
飯塚市川島古墳と若宮町損ヶ熊古墳は6世紀末の築造で。奥壁に川島は2色で人物・円文・三角文が、損ヶ熊は1色で縦・横・斜線が描かれています。
頴田町城腰横穴、直方市水町横穴、中間市瀬戸横穴、同羅漢山横穴、同土手の内横穴、鞍手町古月横穴、北九州市相坂横穴は線刻を用いた横穴系です。
石室系の彩色装飾古墳は遠賀川上流域の嘉穂盆地と中流の若宮盆地に分布しますが、横穴系の線刻(人物・鳥・木葉・魚・斜格子文など)を主とする装飾古墳は下流域を中心に分布しており、遠賀川の上流と下流で地域性が明確にみられます。